とち餅ができるまで〜収穫から加工

甲津原漬物加工部

栃の木 トチノキ(Aesculus turbinata)
ムクロジ科 トチノキ属の落葉広葉樹

甲津原名物のひとつに、加工部のお母さんたちが手づくりする、大豆餡入りのとち餅があります。
とちのあじがする、豊かな自然の風味がひろがるお餅で、はじめていただいたときに感激しました。
よもぎ餅もおなじく、大豆餡のやさしいあじわいが、よもぎの香りを引き立たせます。

わたしは、「とちの実はアクが強くて、加工に手間がかかる」という情報だけは知っていましたが、実際にどれだけ手間のかかることなのかみたこともなく、知りませんでした。
もし手間がかかりすぎるのであれば、これから先も加工を続けてゆけるのか?
という疑問もあり、収穫から加工、お餅づくりまでを取材、記録させていただきました。

はじめに、とちの実がとれる地域ではどこでもそうですが、甲津原も同じく、とちは昔からみなさんに愛され、暮らしに欠かすことのできない貴重な山の恵み、食材であり、保存食でした。
縄文の遺跡がのこる甲津原、きっと縄文のころから食べられてきたことでしょう。

昔は、山のなかにトチの木がたくさんあったが、材として売るようになり、多くの木が伐られてしまった。
学校へあがるころから皮むきを手伝った。
昔はみんな「のし」にして保存し、切って、囲炉裏で焼いたり、炒り鍋で焼いたりして食べた。

以前にインタビューした高橋さん(86才)、加工部のお母さんたちから、教えていただきました。

2018年9月、交流センター前にあるとちの木から実が落ちはじめたので、とちの実ひろいをしました。
1カ月ほどかけて、落ちてきた実を収穫してゆきます。
果皮から実をとりだして、しっかりと乾かして、保存します。


なぜすぐに加工しないのかというと、鬼皮をむいたあとの実を3日間、川にさらしてアクをぬくのですが、甲津原は雪が降る時期が早く、雪が積もると、川にさらしておくことがむずかしいからです。
また、冬はやることが多くて忙しく(20俵の大豆でお味噌を仕込み、伊吹大根や赤カブのお漬物づくり)、そんなことで、毎年、雪が降らなくなってから加工します。


年があけて 2019年3月下旬、雪も終わりの頃、いよいよ1年分のとちの実を加工する日をむかえました。
今年は乾燥させた約14kgの実を3つの袋にわけて、1日ごとに皮(鬼皮)をむき、川につけて、翌日は次の皮をむいてと作業をすすめます。


まず、皮をむく前日にとちの実を水につけておきます。
そうすることで、鬼皮と実との間にすき間ができてむきやすくなります。
翌朝、火にかけて、少しあたたまったところで、栗の皮むき器で鬼皮をむきはじめます。


もちろん昔はこんな便利な道具はありませんでした。
口でむいたり、囲炉裏のところにおいて、金槌でコンコン打つと口がぽろっと割れて、それをきっかけにむいたり、いろいろと試行錯誤されたそうです。


お母さんたちは無駄のない素早い手さばきで、どんどん皮をむきます。簡単そうにみえますが、いざやってみると、皮は栗より厚くてかたく、慣れない作業のため時間がかかります。


むかれた実はお鍋へもどして1晩つけたのち、翌日から3日間(2晩)、流れ川にさらします。


ここは、石の鉢が置かれており、川から引いた水が、鉢にたまりつつ流れる出る仕組みになっています。


3日後、川からあげた実を、たっぷりの灰と熱々のお湯がまざった特別な鉄鍋へ入れて混ぜあわせ、丸1日〜数日つけおきます。
実が黄色くなり、噛んでみてアクが抜けていたら完成です!
こうして全部で1週間ほどかけて、アクぬきまでの作業をおこないます。


文字にすると簡単ですが、やはり、なかなか手間のかかる作業でした。
お餅づくりへとつづく…

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