縄文のころから先住民が暮らした甲津原。
山のなかを移動しながら、自然と一体になり暮らした人たちにとって、
貴重な食料であったトチの実。
トチの実はつよいアクがあり、生命力があふれます。
甲津原のご高齢の方たちは、幼いころから囲炉裏で焼いて食べ続けてきた、
「のしのトチ餅」が大好きです。
そんなトチノキ、今年もきれいな花を咲かせています。
近所のおじいさんが「昔は6月に入ると咲いた、ずいぶん早よ咲くようになった」と話していました。
トチノキの花をよく見ると、自然がうみだす複雑な造形をしています。
白、黄、ピンク、はなやかな色をした小さな花があつまり、
円筒のようなひとつの大きなかたまりとなってかたちづくり、枝にたくさんついています。
小さな花のひとつひとつは、くるんとカールした雄しべがたくさんついていて、立体的で、妖艶、どこか南国的な雰囲気も漂います。
トチの実の野生的なイメージとは少し違います。
小花のかたまりのひとつは20cm以上あるため、わりと大きく、風が吹くと軽やかにゆれて、迫力があります。
ついつい見惚れてしまう日々。
山にある木の近くには養蜂箱があり、トチの蜂蜜が採集されます。
葉は大きくてぬくもりがあり、お皿にも活用し楽しめます。
写真の立派なトチノキは、甲津原交流センター前の姉川沿いにあり、少なくとも樹齢300年前後ではないかと推測されます。
この地に根をはり、天災に耐えて、ながく集落を見守り、ともに成長してきた木。
たくましさを感じながら、私たちも自然を思いやらなくてはとあらためて思います。
今年はたくさん実をつけるかな、秋が楽しみですね。
以前、高橋大吉さんにインタビューしたとき「まだ林道もついていない昔、山のなかにトチの大木が何本もありました。木がお金になるときにみんな切ってしまった。とてももったいないことをした」とお話しされていました。
残っているトチノキをながく大切にしたいですね。
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