以前にご紹介した2つの昔ばなし「十二の能面」と「雨乞いの面さま」に続きまして、次のお話は、いくつか言い伝えが残る池のお話です。
お話に出てくる金糞岳*は、長浜市高山町にあり、高山町と米原市甲津原は、昔は同じ滋賀県東浅井郡の東草野村と上草野村で、ながい間、おとなりの村でした。
(明治22年〜昭和31年)
*長浜市高山町と岐阜県揖斐川町をまたぐ山
そして「池」は、村と村の間にある山の上にあります。
『姉池、妹池』
(昔ばなし『いろりばた』より)
むかしむかしのことです。
甲津原にそれはそれは気だてのやさしい、きれいな2人の娘が住んでいました。
2人はかいがいしく木を切ったり、草を刈ったりして暮らしていましたが、誰もどういう家柄がらの、どういう娘たちなのか、知っている人はありませんでした。
向山谷をのぼりつめると鳥越峠がすぐ左手になりますが、その向こうの金糞山に、とてもりっぱな若者が住んでいました。
この若者はとても勇敢で、どんなけものもこの若者の前には、一夜でたおれてしまうといわれていました。
2人の娘はいつのまにか、それぞれにこの若者を恋い慕うようになりました。
そして姉娘は妹を思い、妹娘は姉の幸を祈りました。
ある日のこと、2人の娘ははじめてはなればなれに山仕事に出かけました。
今まで、2人がはなればなれになることなど遂になかったのでしたが、
ふしぎにも姉は妹に、妹は姉に若者との幸を祈って、それぞれに山の池に身をなげて死んでしまいました。
このことを知った金糞の若者もまた、自ら火をふいて死んでいったといわれます。
村人たちは3人の死をとても悲しみました。
姉が入水した池を姉池、妹が入水した池を妹池と呼んでいます。
秋になると咲くフシグロセンノウの赤い花は、この入水した姉と妹の生まれかわりだといわれています。
おしまい
思いやりにあふれた悲恋のものがたり、なんとも言えない気持ちなりました。
このお話を読んだあと、集落のSさんに「池は山の上にある」とお聞きしました。
Googleearthで確認ができ、「いつか行ってみたい」と思いがつのり、月日がながれること1年以上。
2021年6月、ついに願いがかないました!
コメント